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FTSとCAIを用いて測定されたデータは、図7に示す流れでデータ処理がなされプロダクトが作成されます。FTSによる観測値からスペクトルが得られ、CAIからは雲やエアロゾルに関するデータが作成されます。これらのデータを統合し、雲やエアロゾルの少ない観測点において、二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)のカラム量を算出し、大気輸送モデルを利用した解析により、全球におけるそれら気体の吸収・排出量の分布、および気体濃度の三次元分布を推定します。

 

 

 大気中に存在する二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)は、ある特定の波長の光を吸収する性質があるため、大気中を透過してきた光の吸収の度合いにより、光の通り道に存在したCO2とCH4の量を算出することができます。図8はFTSの観測で得られたスペクトルの例です。櫛状のへこみがCO2やCH4などの気体による吸収を表しており、その深さがそれらの気体のカラム量(表3の注3参照)に関係しています。

 

 

 データ解析は以下の流れで行われます。まず、取得されたFTSのスペクトルデータのうち、その視野内に雲がないものを、より高い空間分解能を持つCAI画像などを用いて選び出します。次に、気体による吸収の特性に基づいて、スペクトルを逆推定と呼ばれる数値計算手法を用いて解析し、CO2とCH4のカラム量を算出します。CO2濃度の変化は、主に地表面付近で顕著に表れます。1.6μm付近や2.0μm付近のCO2の吸収帯は、地表面付近の情報を多く含む波長帯として重要です。一方、14 μm付近の吸収帯は、主に2 kmより高い高度の情報を得るために利用されます。

 

[3] GOSATデータの解析方法

図8、GOSATの観測で得られたスペクトルの例と、そこに現れた二酸化炭素やメタンなどの吸収帯のグラフ

図7:GOSAT データ処理の概要

 (画像クリックで拡大)

図8:GOSATの観測で得られたスペクトルの例と、そこに現れたCO2やCH4などの吸収帯。一番上のスペクトルはシミュレーション、各バンドのスペクトルはFTS L1Bプロダクト(初期校正済み、5章参照)

 こうして得られたCO2とCH4のカラム量のデータを週ごとや月ごとに平均し、全球へマッピングを行います。そして、全球を亜大陸スケールで多数の領域に分割し、全球にマッピングされたCO2とCH4のカラム量などのデータを用い、大気輸送モデルに基づく逆推定により、各領域におけるそれら気体の収支すなわち吸収・排出量を推定します(図5)。以前は地上観測のデータのみを使って吸収・排出量を推定していたため、地上観測点が少ないアフリカや南アメリカなどの地域での推定誤差が大きいという問題がありました。GOSAT観測により全球の晴天域でほぼ一様にデータを取得できるので、この吸収・排出量の推定誤差が低減します。さらに、こうして得られた吸収・排出量分布と大気輸送モデルを用いて、全球におけるCO2とCH4の濃度の三次元分布を推定します。

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